■ Foget-me-nat Blue ■ 「ねぇ不二。実は機嫌悪いだろ〜」 部活が終わって帰るころは、もう辺りは真っ暗。 英二がチラチラとなりを歩く不二を伺いながら呟いた。 「別に、いつもと変わらないよ」 「うそだぁ〜俺わかるもん」 「そんなことないよ。むしろ機嫌いいけれど?」 さっきからずーっとこの調子の2人。 「じゃあ、なんでさっき無視したんだよ・・・」 無視・・・というか、ちょっと今、英二と話したくなかったんだ。 べつにそれだけ。 他に理由なんてない。 そりゃ・・・僕が言ったように、機嫌がいいわけでもないけどさ スタスタと英二の前を歩く僕の背中に、猫が爪を研く仕草をまねて カリカリと軽くひっかくようにしてじゃれる英二。 彼はこういう可愛い仕草が似合う。 前、そう本人に言ったら喜んでた。 まあ、男が可愛いと言われて、うれしがるのもどうかと思うけど。 似合うからいいか、と思う僕も僕。 「で、何で拗ねてんの?」 大家族の末っ子らしく、みんなに愛される可愛い仕草で油断させておいて、これまた 末っ子らしい勘の良さで不二を追いつめる。 「・・・拗ねてないよ。」 「嘘つき」 「嘘じゃないよ」 「嘘つきぃー。不二が言わないんなら俺が言ってあげようか?」 「・・・・・・・・・・・・・・何だって言うの・・・・エージ。」 なかば呆れたような、観念したような不二の声 それまで不二の斜め後ろを歩いていた英二は、タタタタッッと走って不二の前に立つ。 まるで『とおせんぼ』状態。 仕方なく止まった不二に、体をかがめて下からのぞき込むような形で英二は得意げに言った。 「不二はねぇ。やきもち焼いてるんだよね」 図星、その単語が僕の頭をよぎる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰に?」 僕としたことが、なるべく表情を変えないでそう答えるのがやっとだった。 そんな僕を見て英二は満面の笑み。 そして自信満々にこういった。 「大石、にでしょ?」 「・・・なにそれ、わからないエージ」 「おやおや?不二ぃ〜。今、言葉につまったっしょ?」 カチンときたけど、『カチンとくる』ってことは図星じゃないか・・・なんてもう一人の自分が この状況を楽しんでいるのを感じた。 「・・・どうしてそう思うの?」 「だって、わかりやすいもん。不二ってば。大石と部活終わってからダラダラ話してたらさー、 だんだん無口になってくるし。一緒に帰る約束してて不二待たせちゃったのは悪かったけどさぁ。」 何考えているかよくわからないとはよく言われるけど、わかりやすいなんて初めて言われた ような気がする。こういったところが英二にはかなわないと思う所以だったり。 ちょっと認めたくないけど。 だから、ちょっと意地悪な気持ちで言ってみた。 「そうだよ。僕、待たされるの嫌いなんだけどね。」 「うん、それはごめん。でもそれだけじゃないでしょ?不機嫌な理由って。」 「んー、僕は僕自身が機嫌悪いって認識はなかったけど、英二がそういうなら機嫌悪い 理由ってそれじゃない?」 まるで人ごとのように言ってみる。 「待たせたのもあるけど、一番の理由はねぇ。俺わかっちゃってるんだってば。」 「だからなに?」 英二はコホンッとわざとらしい咳をしてみせて、もったいつける 「俺が大石ばかりずーっとかまってるから、寂しくなっちゃったんだよねぇ〜? どうどう?アタリだろー!?」 「・・・・・寂しいって・・・」 ちいさな子供じゃないんだから・・・・と思うけど、まさしくソレかも、なんて英二に言われて 気が付いた。 「俺が大石ばっかりかまってたから拗ねちゃったんだだろ?もー不二可愛い〜♪」 我が耳を疑う。 僕が可愛いって?かわいい・・・? それはちょっとどーだろう? 図星をつかれて気まずいのと、得意げに【英二>僕】の図式を作ってしまって、 僕を可愛い扱いしてくれる英二が面白くなくてあえて彼の言うところの「拗ねてる僕」を 演じてみた。 「そうだよ。英二ってば全然僕のことお構いなしなんだから。僕のことなんか気にしないで 大石といればいいじゃない?」 英二は目を大きく見開いてビックリしている。 まさか、この僕が素直に認めるとは思ってなかったんだろう。 二回ゆっくり瞬きして、僕を見つめ直す 「なんか、きゅーに可愛くなくなった。」 形勢逆転、質問を逆手にとって今度は僕が英二の反応を楽しんでいる それを察知したらしく、今度は英二の方が拗ねモードだ。 「なーんだ、つまんないの」 「だから言ったじゃない?僕は可愛くないって」 「違うよ。不二は可愛いの!・・・・今は可愛くないけどさっ」 悔しそうに僕を可愛いと言い続ける英二の様子がおかしくて、 それこそ、かわいいなぁ〜なんて思った僕は、そのままの気持ちを口にする。 「世間一般に、可愛いってのは英二みたいなのを言うんじゃない?」 英二はニンマリ笑って 「世間一般なんて知らないけれど、俺の中では不二はカワイイの!」 やれやれ、まぁ、英二がそう思うならそう思ってればいいや。 男が男に可愛いって言われて嬉しくはないはずだけど いや、女の子からだって男が可愛いって言われるのはどうかと思うけど ・・・・・・・悪い気はしないかも・・・・これってマズイかな? 「そうか、僕って可愛いんだ。あはは」 「あー、不二、恥ずかしくなったの笑って誤魔化してる〜」 またもや形勢逆転。 いや、初めっから英二には何一つ勝てない気がする。 「あーあ、僕、不機嫌だったハズなんだけど。なんか英二って狡いよね」 心外だなと、英二の眉間に浅く浮かぶシワ その様子がなんだか面白くて、そこをツンツンと人差し指でつつくと 我慢できないといった風に英二は吹き出した。 「ホント、英二は狡いよ。僕のこと何でも解っちゃうんだ」 結構ポーカーフェイスは得意なんだけど けれど、なーんだそんなことと英二は笑う 「だってしょうがないじゃん!見てれば解っちゃうんだもん。」 そんなんで狡いなんて言われてもねぇ〜と腕を後頭部で組んで すっかり暗くなってしまった空に、うっすら滲むように光っている星を見ながらこう言った。 「ちゃーんと見てるから解るんだもんね♪」 ふ〜ん・・・ 「見ててくれてるんだ」 「そーいうこと」 ちょっとの沈黙の後、心持ちいつもよりゆっくりと英二は言葉を紡いだ 「大石と話し込んで待たせちゃったのは謝る。でも不二のこと忘れてた訳じゃないよ。」 忘れてないよ、って響きがなんだかストンと胸の中に落ちてきて イライラしていた自分が凄く恥ずかしくなった。 「うん」 僕は、嬉しかったのに、それだけしか口にすることが出来なかった。 終 |