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     ■Baby Blue■










「ねぇ英二」


「にゃにー?」


「なんか欲しいものある?」


「・・・へ?」





お昼のお弁当を2人で仲良く屋上で食べていたときのことだった。

今日はとっても天気が良くて・・・そういや梅の花が咲いていたな〜なんてぼんやり思う。

さて、次はどのおかずを口に運ぼうかと箸の先をくわえ考えていたら、目の前に

座っておべんと食べてる不二が唐突に聞いてきた。





「いきなりなんで?」


「英二に、何かプレゼントしたいんだ」




不二はそれだけ言うと黙ってしまう。

話の脈略がわからなくて、グルグルしている俺を嬉しそうに眺めてる。



ますます俺の頭の中は混乱する。




「俺、誕生日じゃないよ?」


「うん、知ってる」


「この間のテスト酷い点数だったよ?」


「知ってるよ」


そんな事くらい、それにしても酷かったよねぇ〜と笑ってる。




じゃあ、いったい何なの?

俺に、なんか不二からプレゼントもらえるような「理由」ってあったっけ?




疑問符の嵐。




「うーーーーーーーーん・・・・・・・」




考えて考えて、それでもわからない。

チラリと上目遣いで、不二に教えて光線を出してみる。




「んー、とりあえず、おべんと食べちゃおうか。」




それからにしよう、ね?と笑った。








     天才は、そうたやすく答えなんて教えてくれないのだ。








食べ終わってからって言われても、グルグル回る「?」達。

おかげで大好物の味もいつもと比べて半減する。




     ・・・・・モクモクモクモクモクモクモク・・・・・・・


もうすぐ食べ終わるってところですかさず不二が大きなタッパを差し出した。




「姉さんが作ってくれたんだ。食後のデザート、どう?一緒に食べない?」




中に入ってたのはイチゴがたっぷり、カスタードクリームもたっぷりのタルトだ。




「食べる食べるーー!いっただっきまーっすっっ」


「あはは、姉さん曰く、今回も自信作だから心して食べてちょうだい・・・だって。

確かに姉さんの作るお菓子っておいしいからついでに英二の分もつくってよって

お願いしてあったんだ。」




目をキラキラさせてかぶりつ英二を不二は、ニコニコしながら見ている。




「うっまーい」


「それは良かった。」




そういって、不二は英二の感想を確認してからタルトを口に運ぶ。




「しかしいいよなぁ〜。不二の姉ちゃんはこんなうまいお菓子作れて。俺んちの

ねーちゃんなんかぜーんぜん料理なんてしないぜ?」


「そうかな?んー、まあ作ってくれるのはいいんだけど、試食係はいつも僕なんだよね。

たまにってくらいの頻度だったら良いんだけど・・・度々だとちょっと飽きるよ?」


「えー?!俺、毎日でも試食係するー。」


「うん、英二ならそう言うかなって思って。だから試食係、一緒にやってくれる?」


「やったね。もう、いくらでも持ってきてよ。なんなら、オレ不二の分も食べてもいい♪」





モクモクモクモクモクモクモク・・・・・・・




タルトに集中している英二に不二はまた聞いてきた。

少しだけ首を傾けて。





「で、何か欲しいものある?」




その時、春の気配を含んだ風が、優しく不二の髪をなでていく。

女の子から王子様扱いされているところのある不二だけに、絵になることこの上ない。

けれど、王子様に恋する乙女なんかじゃない英二にとって、そんな魅力はかえって邪魔くさい。




「だーかーらーいったい何だって言うのさー」




訳のわからない質問を再びしてくる不二にイライラしてきた。

その気持ちのまま、ムッとした顔を不二に向ければ

食べかけのタルトから、欠片がこぼれて学ランの胸元にくっついた。




「あーあ、こぼしちゃって。」



  子供だよねー?英二って。



後半は視線だけでそういう不二に、いったい誰のせいでこぼしたんだと思ってんだよと

切り返したいところだけど、そのタルトをくれたのは不二なわけで。




「うーーーーーー」


「うならないの」




そういってハンカチを差し出してくれた。




「・・・あんがと」




不二のハンカチでちゃっかり拭って、とりあえず綺麗にしてみる。




「・・・あとで洗って返す。」


「別にいいのに」


「そんなわけにはいきません」




  そんなことより・・・・・




「ねーー降参。オレ、なんか不二にモノもらえるようなことした?」




不二はちょっと皮肉げに唇の端をあげて、笑った表情をつくって見せた。

ん?珍しい表情だ。

ちょっと見とれてしまったオレに不二はしゃあしゃあと言ってのける




「別に贈り物するのに理由無くてもいいんじゃない?コレあげたいなとか、あげたら喜ぶ

だろうからって軽い気持ちくらいでいいんじゃない?」


「・・・・んー、では不二君は、オレに理由もなく、イベント性もなく、ただ

『なんか、英二の喜ぶ笑顔が見たいのvv』ってだけでプレゼントしたいんだ?」




嘘くせぇ〜・・・そんな視線でジロッと不二を見返すと、皮肉げな笑顔から一転『意味深な』笑顔で




「でも、実はちゃんと理由があるよ」




   だからそれが聞きたいんですオレ!




「ハァ・・・お願い。ヒントくれよ。」


「そんなに警戒しなくて良いのに。僕からタルトもらったときはそんなに警戒しなくてすんなりもらって

食べたくせに、へんなの英二。」


「いや、それとコレとは別でしょ」


「別じゃないでしょ?」


「・・・・見返りのない、無償な贈り物には気を付けろっっって母ちゃんがこの間言ってた・・・」


「何それ?」




過去になにか痛い目でもあったのか?そんな菊丸家家訓に苦笑しつつ

「じゃあ ヒント。」と、ようやく不二は謎解きのヒントを口にした。




「おかえし」


「へ?」


「これから僕が英二にするプレゼントは、僕から英二への『おかえし』の意味が込められています。」




ちょっと気取った感じでそう答える不二。
表情は、いつものように底が見えない微笑みを浮かべている。




ますますわかんねぇ・・・。



おかえし・・・ってことは、お返しされるようなことをオレが不二にしたって事だよな。


記憶にない。


っていうかむしろ日頃から、今食べた「タルト」みたいに不二からいろいろモノもらったり

宿題見せてもらったり、テニスの練習相手になってくれたりってお世話になりっぱなしな

オレな訳で・・・・どう考えても不二がオレにお返ししてくれる『理由』が思い浮かばない。


英二は考える。

でも、心当たりが無いモノは無いのだ。

これでも記憶力は悪くないはずなんだけどなー・・・やっぱり聞いた方が早い。




「あのー・・・えっとぉ・・・・なんのお返しなの?」




ますます意味深な笑みを深くする。




「これ以上はナイショ」




たぶん、英二には考えてもわかんないよ、なんて声が聞こえそうな表情で

立てた人差し指を唇によせ、小首をかしげて可愛く見せても・・・見せても・・・・・



・・・・・女の子が見たら、よろこぶんでしょーね・・・・。ちぇっ


おかえし、といえば一ヶ月前のバレンタインを思い出す。

不二のヤツ、たっっっくさん女の子からもらってたよなぁ。

オレもいくつかもらったけど、不二がもらった数には遠く及ばない。

・・・たぶん、もらったチョコの数はテニス部の中でダントツ一番だ。




「そういやさー、不二バレンタインにいっぱいチョコもらってたじゃん?おかえしすんの?」




もてる男は大変だねぇ〜なんてちゃかしたところで、不二の顔がちょっとだけ歪んだのに

英二は気が付いた。




「どっかした?」


「べつに?」


「そー?」


「うん、そーだよ」




何食わぬ顔で話を流して、一番肝心なことを気が付かれないように。

どんなにしらばっくれて見せても、意外とするどいからなぁ英二って・・・なんて

ひっそりと心の中で不二は思う。

自分に不利になりそうな話の流れを自分にもどすために

渋々答えを口にした。




「だって、僕、英二からチョコもらったから。」




   3/14のホワイトデーは、チョコもらったおかえししなくちゃいけない日だろう?




「・・・あーーーーもしもし?不二君。」


「ハイ、なんでしょう?」


「オレ、バレンタインに不二にチョコあげた記憶無いよ?」


「僕、ちゃんと英二からチョコもらったよ?」




にっこり笑って、嘘ついてないよ僕・・・と不二。




しかしどんなに考えても、そんなことはしてないはずなのだ。

だって、おかしいじゃん!仮にも男であるオレが不二にバレンタインにチョコ渡すだってぇ?

なんかの罰ゲームじゃなきゃ、男が男にチョコあげるなんてことするはずがない。




「不二の嘘つき!」


「嘘じゃないよ」


「じゃあ、オレが不二にどんなチョコあげたんだよ。もらったんなら言えるだろ?」




にゃーにゃーと機嫌の悪い猫のように不二へあたる英二に、いたずらっ子のような

笑い付きで不二は答えた。




「ポッキー1本」


「は?」


「だから、バレンタインの日のお昼休みに英二からおやつのポッキー1本分けてもらったの。

アレもチョコだよね?」




えっと・・・・プレッツェルにコーティングされたチョコだけで・・・いや、それもチョコには

間違いないんだが・・・・それだけで・・・それだけで・・・・




「それだけで、バレンタインのお返しとかいう話になるのかぁ!?」


「うん」





   ・・・いや、うんって・・・・。





なにをどう不二は楽しいのか、『本当』に嬉しそうな笑顔を浮かべて唖然としている英二を見ている。




「だから、おかえし何が良い?」




ポッキー1本でおかえしもなにもないんだけど、この流れだとオレがお返しの希望を

言わない限りこの不毛で中学生男子とは思えない会話は続いてしまうのだろう・・・。




「・・・よく、女の子達がさーホワイトデーは3倍返しが常識っとか言ってたよね」


「ふーん、そうなんだ」




さて、英二が僕に3倍返しで何をねだるんだろう?不二は少しドキドキして英二の答えを待つ。

薄いコーティングのチョコで、バレンタインのチョコにしてしまう自分に笑ってしまうが、

本当にくすぐったくて嬉しかったんだ。

僕だけにしかわからない僕だけにしか味わえない・・・僕が意識しなければただのおやつでしか

なかった訳だけど・・・。




   特別にしてしまいたかったのは自分。




自分勝手なのはわかってるから、冗談にして笑い飛ばして・・・でも笑った影でちゃんとお返しをして

イベントを完成させてしまいたかった。




    自己満足だってわかってるけど。




「じゃぁねぇ・・・・」




英二の答えを彼に気が付かれないよう、でも神妙な気持ちで待つ。




「3倍返しだから・・・ポッキー3本」


「は?」




  ・・・・え?それだけ?




いや、確かに3倍だけど・・・ちょっと特別に感じたポッキー1本の3倍にはとうてい安すぎる・・・・。

自分にとってただのポッキーじゃなかっただけに、ちょっと気が落ち込む。




「でも、ただのポッキーじゃないぜ。つぶつぶイチゴのゴージャスポッキー3本なのだ!」




オレ、あのつぶつぶイチゴのポッキー好きなんだよねぇ〜とニコニコ笑う英二に、

ちょっと落ち込んだのが浮上する。

普通のポッキーじゃなくて、イチゴのポッキー、しかも普通のより英二が好きだという

ポッキーに変換してくれたことが『僕に特別にねだる付加価値をつけてくれた』ような

気がして嬉しくなった。



たぶん、こんなの誰もわかってくれないけれど


   ・・・こんな些細すぎるほど些細なことが嬉しかった。




「やっぱ、エージはいいよなぁ〜」


「なにわかんないこと言ってんの?」




英二は残りのタルトを口に放り込んで、手に着いたタルト生地の粉をパンパンと

腰に撫でつけて払い落とした。




「行儀悪いよ?エージ」




お小言いいながらも不二の声は弾んでいる。




「んー、気にしにゃい。気にしにゃい。」




英二は立ち上がってググググーーーーっと空に向かって腕を伸ばす。




「んーーーーー良い天気!」


「そうだね。」




英二の伸ばした腕の先にある空を見上げて僕も頷く。




「じゃ、帰りコンビニ寄って買って帰ろう?つぶつぶイチゴポッキー。」


「うん」




一緒に帰る約束を交わして不二も英二に習って立ち上がる。




「もうじき一つ学年があがるね」




不意に英二が呟いた。





その言葉が、なんだかストンと身体の中に落ちてきて、そのあまりの自然さに切なくなった。










      僕らはもうじき、3年生になる。










                                    












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俺とダブルス組まないか?
(あとがき)




またもや懲りずに中学生日記です。
この話・・・読んでわかってくれる人っていったいどれだけいるだろう・・・?
わかりづらくて申し訳ない。
なんていうか・・・すっごく些細な些細なことまで、
ドキドキする『理由』にしてしまうっていう
話を書きたかったんですが・・・。

あと、この話の「3−6」2人は2年生ってことでお願いします!!
だって3年だったらホワイトデーのころ、とっくの昔にご卒業して
さらに受験結果までわかっちゃってる時期じゃないですか。

あ・・・でも、2年とかいってもこの時期ならとっくの昔に春休み入ってて
学校にいること自体不自然なのか?
(我が中学時代は遙か彼方昔ゆえ、思い出せない・・・わからない)

春休みなら・・・部活で来てて2人はのほほんと屋上で休憩中ってことに
しておいてください!!

おばちゃん・・・若い子の生態がよくわかりません。


お題のベビーブルーですが、

Baby Blue<ベビーブルー>
乳幼児服の標準的な色として用いられてきた淡い青色。


可愛い可愛いお話を目指したのでこれでいいや!エイ!
てなものです。

単に「ブルー」を使いたかったので
なんかいいのないかな〜と・・・で、適当に←オイ!

イチゴポッキーにちなんで
ベビーピンクの方がいいのかも知れませんが
そんなの知ったこっちゃありません。←え?


青空が広がる学校の屋上
ってのが私のなかの3−6二人のイメージ

ああ、早く春がこないかなぁ〜。
今年のホワイトデーは
我が地方雪降りましたよ。積もりましたよ。(泣)



季節の春もいいが

人生の春も早く来て欲しいものです。←・・・あ・・・



05.3.18 UP

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