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■ Turpuoise blue ■








誰もいない屋上。

夏休みの校舎は、人もまばらだ。

ましてや、屋上に人がいるはずもなく、練習の合間、すこしサボるため隠れるには最高の場所。






「あれ?携帯変えた?」




不二が手にしている見覚えのない携帯電話。

薄くてシンプルなデザインが目をひく最新型だ。





「うん、目ざといね。英二。」


「ちょっと貸して」




不二の了解を待たずに、ひょいっと携帯電話を取り上げる。

いつものことなので、不二も何も言わない。





「うっわっ、超薄い。いいなぁ〜、色もいいよね。メタリックだけど柔らかい水色だね。いいな、いいな、

俺もこれにしようかな。」


「英二、半年前に携帯変えたじゃない?」


「そーだけど、これいいんだもん!」





機種の世代交代が早い携帯電話。

たしかに、半年も経てば古い部類に入ってしまう。

けれど…





「羨ましいのは解るけどさ、今持っているのを使いこなせるようになってからそう言うこと言いなよ。」


「う…っ」




痛いところをついてくる。





「しょ、所詮電話だろ。電話かけられて受けられればそれでいいんだよ。今のままで十分だもん。

全部使いこなせなくても別に困らないもん。」





そう言い訳しながらも、最新型の携帯をいじる手は止めない。

二つ折りの携帯電話を、パクンっと開く。




「なにこれ?」




待ち受け画面を見て、英二は眉間に皺を寄せる。




「なにこれって…言われても。僕んちのサボテンだけど。」




待ち受け画面にあったのは、見覚えのある奇妙な形のサボテン。

去年、不二の誕生日に、英二がプレゼントした物だった。

誕生日に何が欲しいと言われて、サボテンと答える天才に、嫌みも込めて奇天烈な造形の

サボテンを贈ったのだった。




まさか、こんなところで再会するとは…。



脱力感に襲われる英二を尻目に、不二は可愛いサボテンについて熱く語り始める。





「ホント、英二のプレゼントしてくれたサボテン、可愛いよねぇ。小さな花が咲いたんだよ?

その記念に撮したんだけど、ほら、ここ、これ花だよ。健気っていうか、棘ばかりの姿が

愛しさをかき立てるって言うか……ホント、可愛くてしょうがないんだよねぇ〜。」





…天才ってホント理解不能。




それに、なんかおもしろくないぞ。





英二は、モソモソ不二の携帯をいじり始めた。

いくつかボタンを押して、軽く自分から離して体勢を整える。





「英二?」




英二が、なにか自分の携帯電話に小細工しようとしていることを悟って、不審顔の不二。

その不二の目の前で、英二は、最高の笑顔を作って見せた。





カシャッ




シャッターを切る機械音がした。





「え?」




驚く不二を横にして、菊丸は満足そうに「よしっ!」なんて声を漏らす。



どうやら写真を撮ったらしい。

そのことは解る。

だが、さすがの天才不二も、英二の意図がわからず見ていることしかできない。




ピッピッピッ…。




いくつかボタンを押しているのを示す機械音…………程なく、





「よし、終了!完璧パーペキだね!ってことで、ホイッ、返す。」





パクッと閉めて、ポイッっと携帯を投げてよこした。




「え?え?ええっ?」




慌てて、携帯電話を受け取る。




「乱暴に扱わないでよ」


「いーじゃん、不二反射神経いいんだから、取れるに決まってるって解ってるもん。」




あまりな言いように、溜息ひとつ吐いて、英二が自分の携帯に仕組んだイタズラを確認する

ためにパクンと開いた。




「!」


「こっちの方が、可愛いって。」





悪戯っ子の笑みで、満足げに笑っている英二が待ち受けに設定されていた。





「……ま、確かに、かわいいけど…。」


「だろ?」


「でも、男が男の待ち受け画面って、それどうかな?」




真面目に聞いてくる不二に、単にイタズラで、不二に瞬間顔をしかめさせれば満足だった英二は、

慌て出す。





「…いや、だったら変えなよ。別にずっと待ち受けにしろなんて、俺、言ってないって。」




ニヤリと笑って、今度は不二が英二に反撃開始。





「でも、サボテンより、英二の方が可愛いし」




そう言って、もう一度待ち受け画面の英二を見る。

ちょっと意地悪な笑みと、ジャージの青と、隅に写り込んでいる空の青。

画面の解像度のせいなのか、はたまた光の入り具合のせいなのか、

ジャージも空の青色も、全体的に少し緑がかって…





「ストラップとおそろいで、完璧なコーディネートじゃない?」





パクンと携帯電話を閉じて、ストラップに指先を引っかける。

ストラップは、トルコ石が飾られていた。

不二の姉が、お守りにと作ってくれたトルコ石のストラップ。




「これ、僕にとって最高の強運グッズって感じだね。」




軽く笑いながらそう言って、ジャージの胸ポケットにしまい込む。




「じゃ、そろそろ行こうか。」


「うん。でも、携帯胸ポケット入れたままコート行くの?手塚とかに見つかったら怒られるよ?」


「んー…なんか今、離れがたい感じがするんだよねぇ。」


「なにそれ?いくら新しいの買って嬉しいからって…子供みたいじゃん?不二。」





不二は無言のまま、曖昧に笑っただけだった。


二人屋上を後にするため歩き出した。


ふと、さっきチラリと思った言葉が、改めて不二の頭をよぎる。





    『最新機種も、半年経てば古くなる…』




足が止まる。





半年後、僕らはどうなっているんだろう?




ちょっと考えて、僕らはというより、僕の気持ちはどうなっているだろう?と、思い当たって切なくなった。

変わって欲しくないし、変わりたくないけど…。




携帯電話の写真データのように、削除ボタン一つで無かったことにしてしまえる…そんな機能が

僕らにないことに、少しの安堵と、少しの不安を覚えた。





「不二?どうした?」




英二の呼びかけに、ハッとして、それ以上考えるのを止める。




「ごめん、行こう。」




屋上から校舎へ続く重いドアを開けると、光の落差で目が見えなくなる。




「ほら、早く!!さすがにこれ以上サボっていると、手塚に怒られるって!!」




と、背中を押される。

背に伝わる力が、とても強いものに感じて、どうしようもなく揺れる自分を、不二は消せなくなった。










                                                     終








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俺様の美技にブギウギ(あとがき)






えー、一年ぶり?の3−6妄想です。

このサイトで一番需要を見込めない、正真正銘私の自己満足部屋へようこそ(笑)

別に、なんてことない一コマの話で、話と表現するのもおこがましい感じなんですが、

3−6の話を書くと、自分の中で一つ…スッキリすると言うか…リセットできると申しましょうか

そういう不思議な位置づけで、いつも3−6妄想文を書いてます。

たぶん、このサイトの中で、BL要素を臭わせながら、その実、一番清らかなページかも

知れません。(笑)

そして、一番メルヘンなお部屋です。

私にとっての、この3−6の世界観は、夢の世界なのですねぇ。

私にとって、ちょっとしたことで右往左往でき、愛しくも可愛い意地っ張りな時代は遙か遠く、

当時はそれなりに悩むこともあっただろうに、私の年代になって思い出すのは青臭くて、

ちょっと胸がキュキュキュと狭くなる感覚のような寂しさだったり。

そんな気持ちを表すには、青色のタイトルって、とても合うような気がします。

青春って、やっぱり青い春なんだなぁ〜と思う今日この頃。

今回のタイトル「ターコイズブルー」は、「トルコ石の青」です。

ほんの少し緑がかった青色。

じっと見ていると、不思議な青だなぁ〜と感じます。

妙に透明度の低い青の様な気がします。色の下に、白色のプラスチック的なカバーが敷かれていて

のぞけない…みたいな不透明さを感じるんですよね。

そんな、自分でものぞけない自分の心の中、でも一番分かっている心の中の青…って感じを

意識して、妄想した結果がコレ。久々の3−6で、いつも異常に英二を可愛く書けなかったのが悔しい。

ぶっちゃけ、猛暑でダルダルな気分だったので、気分転換に3−6の話を書いてみました。

うん、リセットできた感じがします。なにかよくわからないけど、胸の中がスッキリしたような?

需要無いと解っていても、中学生日記を書くのは止められそうもありません。





                                     07.8.13UP 【青の王様】 ちか




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